2012年8月26日日曜日

[読了]ゲーミフィケーションー〈ゲーム〉がビジネスを変える

井上 明人の『ゲーミフィケーションー〈ゲーム〉がビジネスを変える』を読みました.

井上 明人: ゲーミフィケーションー〈ゲーム〉がビジネスを変える, NHK出版, 2012-01

本書の感想をメモしておきます.

思えば,今の職業についたきっかけはゲームだった.お気に入りのゲームと同じようなものを自分で作りたくなり,親にせがんで買ってもらったコンピュータを使って,プログラムを作り始めた.一応その甲斐あって,今は,ゲームではないものの,プログラムを作る職業についている.

先日ちょっとしたきっかけからゲームを作ることになった.といっても,テレビやゲーム機の画面で娯楽のために行うゲームではない.それとは別の目的に使うものだ.ちょっとしたゲームはこれまで何度も作ったことはある.しかし,確実に他の人に使ってもらうゲームを作るのは初めてだ.だから,何か手助けになる情報はないかと,グーグル先生に聞いてみたら,「ゲーミフィケーション」という言葉に出くわした.ゲーミフィケーションとは,ゲームの要素を応用して,社会の諸問題を改善しようとする試みらしい.まさにドンピシャということで,さらにグーグル先生に聞いてみたところ,本書にたどり着くことになった.

本書は,近年注目を浴びているゲーミフィケーションについて解説している.ゲーミフィケーションとは,「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を,ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの」であり,オバマ大統領の選挙運動,ナイキ社が提供するナイキプラスというサービス,便器についた的などですでに実践されている.

ゲーミフィケーションによって得られる効果の一つに関係性の強化がある.とある企業のサービスにゲーム的要素を組み込むと,それに動機付けられた顧客が,その企業のサービスを再利用するケースが増えるらしい.動機付けには,外的な動機付けと内的な動機付けがある.外的な動機付けとは,報酬や罰により動機付けられることである.一方,内的な動機付けとは,自らの活動それ自体に動機付けられることである.ゲーミフィケーションで施される仕掛けは外的な動機付けであるが,それをきっかけに顧客が内的な動機付けを持つに至ると,企業と顧客との関係性が強化される.ゲーミフィケーションの効果は多岐に渡るが,この効果が一番心に残った.

ゲーミフィケーションに注目が寄せられ始めたのは,数年前からである.その要因についても本書は言及している.その要因とは,空間,時間,人である.まず,空間とは,センシング技術の高度化により,ゲームの素材となる情報を日常生活の中で獲得できるようになったことを指している.次に,時間とは,モバイル端末の普及により,情報の発信や取得のタイムラグが縮小し,適切にフィードバックを受けられるようになったことを指している.最後に,人とは,ゲームに慣れ親しんだ世代の人口が拡大したことを指している.いくつかの条件が揃えば,一つの大きなムーブメントが起こるというのは,「フリー」や「シェア」などの他書でも見てきたとおりで,ゲーミフィケーションというのもそれに当たるものなんだと思う.

本書では,ゲーミフィケーションがもたらす二つの未来について述べられており,両方とも以下に記しておく.1番目がジェシー・シェルによるもの,2番めが本書の著者によるものである.2番目はなかなか素敵だと思う.

「朝起きて歯を磨くと歯ブラシについたセンサーが感知して,歯磨き粉メーカーから「よくできたました!10ポイント」と褒められる.朝食にコーンフレークを食べると,ケロッグから10ポイント.通勤にバスを使うと政府からエコポイントが支給され,それは減税の対象となる.定刻にオフィスに着いたら会社からポイント.打ち合わせ先にバスに乗らずに歩いて行くと,医療保険会社からポイント・・・」

「朝起きて歯を磨くと歯ブラシについたセンサーが感知する.このセンサーの情報はとりあえず集積させておくことができ,歯ブラシを使ったゲームはざっと100種類からダウンロードできる.自分の気に入ったゲームをいつからでも遊ぶことができるし,飽きたらやめてもいい.歯ブラシのセンサー機能を利用して自分でゲームをつくることも,そんなに難しくはない.以前,自分でつくった歯磨きゲームは他のプレイヤーには不評だったけど,自分にとってはけっこうたのしく遊ぶことができた.会社に行くと,新しい人事評価の仕組みがつくられていた.今度の仕組みでは子育てをがんばっている同僚が結果的に損をしてしまう可能性がある修正が加えられていたので,とりあえず自分が仕切っているプロジェクトではちょっと抵抗を試みる.家で子どもとコミュニケーションの時間をとっておくことが,プロジェクト内においてよい評価につながるようにゲームの仕組みを少しカスタマイズしておいた」

2012年8月18日土曜日

[読了]オーバーフローする脳―ワーキングメモリの限界への挑戦

Torkel Klingbergの『オーバーフローする脳―ワーキングメモリの限界への挑戦』を読みました.

Torkel Klingberg, 苧阪 直行(訳): オーバーフローする脳―ワーキングメモリの限界への挑戦, 新曜社, 2011-11

本書の感想をメモしておきます.

誰かに話をしている途中で,その話が本筋から脱線してしまうことがよくある.それはそれで問題はないのであるが,自分の場合,脱線した箇所を見失ってしまい,本筋に戻れなくなることが結構ある.その原因について気になっていたところで目に止まったのが本書である.

本書は,ワーキングメモリをテーマにしている.ワーキングメモリとは,数秒の間,情報をアクティブに保つために備わっている脳の能力のことであり,注意を集中すべきものが何かを保持するのに使われている.ワーキングメモリには容量の制限があり,知覚した新しい情報がどんどん押し寄せてくると,古い情報はそこから溢れだしてしまう.注意すべきものについての情報はワーキングメモリにあるので,何らかの影響でそれへの意識が薄れてしまうと,自分にとって大切なものであっても,ワーキングメモリから消失してしまう.どうやら自分の身に起こっているのは,この現象のようだ.

情報の世界では,データ構造とアルゴリズムという分野があって,データの効率的な表現方法や処理方法が提案されている.私達の脳が持つ数多くの機能は,そこで提案されている各種手法によりモデル化できると思う.そして,このワーキングメモリという能力に至っては,キューのようなものであるような気がする.注意しているものはキューに収まっているので,それが溢れそうになったときに取り出して再びキューに入れないと,それは失われてしまう.そう考えると妙にフィットする.

この考えでいくと,脱線した話を本線に戻せないのは,キューのサイズが小さくなっているとか(年齢のせい?),キューに情報を入れすぎていて,再投入が間に合わずオーバーフローを起こしているとか(話を膨らませすぎ?)が思いつく.どうも両方とも当てはまるような気がしてきた.なお,ワーキングメモリは実際に加齢により容量が低下するらしい.ただ,訓練により増加させることも可能なそうなので,何かいい素材を探してみたいと思う.

2012年8月6日月曜日

著者の名前をHTMLでタグ付けする方法

著者の名前をHTMLでタグ付けする方法をメモしておきます.
<address class="author">mizo0409</address>
参考資料
[1] Which HTML5 tag should I use to mark up an author’s name?