2012年12月13日木曜日

[読了]パブリック

Jeff Jarvisの『パブリック』を読みました.

Jeff Jarvis: パブリック, NHK出版, 2011-11-25

本書についてメモしておきます.

本書は,個人や社会のパブリックな領域が拡大する中で,その状況とどのように付き合っていけば良いのかについて述べられている.本書を読んで得た知見を私見を交えながら以下に記す.

テレビ,ラジオ,新聞,出版,広告など,旧来のメディアからの情報を単に消費する存在であった大衆が,インターネットというパブリックな圏域に向けて気軽に情報をプッシュできる時代が到来している.

情報をパブリックな場所に置くと,集合知の形成に寄与したり,セレンディピティやコラボレーションを引き起こすきっかけになったりする.一方,そうすると,周囲の人をハラハラさせたり,ときには何らかのトラブルを引き起こしたりする.情報をパブリックな場所に置くことは,良い面だけでなく,悪い面もある.

大衆の一人としては,良い面より悪い面のほうが気になるし,そのことを声高に叫ぶ識者もいる.だから,情報をプッシュするのに及び腰になるのも当然のような気がする.しかし,情報をプッシュすることで何かしらのメリットを受けられるなら,積極的にそれを活用し,自分を拡張していけばよい.すでにそれを実践して,その恩恵を受けている先駆的な大衆はいるのだから,彼らの仲間入りを果たせばよい.

そこで,必要となるのが,パブリックとプライベートの境界線を見出すことである.パブリックとプライベートの境界線は,個人の価値観や環境で決まるので,万人に共通するものは存在しないようだ.したがって,その線を見出すには,実践しかない.パブリックな場所に情報をプッシュし,周囲の人の反応を見極めながら,自分が居心地のいい境界線を見つけるしかない.この境界線を見出す力は,これからの時代に必要なリテラシーになるような気がする.