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2018年5月26日土曜日

読了:アテンション

「アテンション」を読みました.

Ben Parr: アテンション, 飛島新社, 2016-03 [アマゾン, 楽天]

本書についてのメモを以下に記しておきます.

情報が満ち溢れる現代において,人々の注目は風のある日の風見鶏のようにあちらこちらに向けられている.1つの対象に対して向けられる注目の時間は昔より少なくなっているのだ.そのような状況において,1つのものに注目を寄せ続けてもらうのは難しい.だから,注目について理解し,その性質に従って適切に振る舞うことが重要になってくる.

注目は即時,短期,長期の3種類に分類される.即時の注目とは,まわりの世界に対する人々のすばやい無意識の反応のことである.この注目は,ほんの数秒しか持続しないので,すぐに忘れ去られるか,短期の注目に移るかのいずれかとなる.次に,短期の注目とは,特定の出来事や刺激に対する人々の短期的な集中のことである.この集中を持続させることができれば,長期の注目を獲得できる.最後に,長期の注目とは,人々の興味を途切れなく,深くつなぎ止めた段階のことである.この段階に至れば,作り手の思惑通りに事が進む可能性が高まる .

3つの注目には,それぞれを獲得するための手法がある.それは,自動,フレーミング,破壊,報酬,評判,ミステリー,承認の7種類のトリガーである.即時の注目を獲得するのに有効なのは,自動トリガーである.自動トリガーとは,対比か無意識の連想によって,特定の感覚的手がかりに注意を向ける傾向このことである.次に,短期の注目を獲得するのに有効なのは,フレーミングトリガー,破壊トリガー,報酬トリガーである.フレーミングトリガーとは,相手の世界観にしたがうか,それを覆すことによって注意を向けてしまう傾向のことである.破壊トリガーとは,人々の期待をあえて裏切り,注目するものを変えさせるのに効果がある.報酬トリガーとは,報酬により人々のモチベーションを向上させる傾向である.最後に,長期の注目を獲得するのに有効なのは,評価トリガー,ミステリートリガー,承認トリガーである.評価トリガーとは,専門家,権威者,大衆の評価を用いて,対象への信頼性が高まったり,魅力が高まったりする傾向である.ミステリートリガーとは,謎や不確実性やサスペンスを作り出して,最後まで関心をつなぎ止める働きのことである.承認トリガーとは,自分を承認し,理解してくれる人に寄せる関心のことである.これら7つのトリガーを適切に組み合わせれば,即時から長期まで注目を維持することができる.

「いいものさえ作れば客は来る」?まったく困った考え方だ.このフレーズを見たとき,ドキッとした.なぜなら,「いいものさえ作れば客は来る」は自分がいつも念頭に置いているポリシーだからだ.いきなり脳天を撃ち抜かれた感はあったが,逆にどうしてそんなことが言えるのか興味をそそられてしまった.多分,最初に紹介したフレーズは本書に記されているフレーミングトリガーなのだろう.相手の世界観を覆すというその手法により,まんまと自分の注目は本書に寄せられてしまったようだ.本書で紹介されている7つのトリガーはいずれも使いやすい手段のように思える.それらの効果は,実践を通して確かめていきたい.

2016年11月5日土曜日

[読了]習慣の力

「習慣の力」を読みました.

Charles Duhigg: 習慣の力, 講談社, 2013-04 [アマゾン, 楽天]

本書についてのメモを以下に記しておきます.

とある研究成果によると,毎日の人の行動の,実に40%以上が,「その場の決定」ではなく「習慣」だそうだ.習慣には良いものもあるし,悪いものもある.行動に占める習慣の領域がそれほど広いのであれば,どちらの習慣がそこに収まるかによって,人生の過ごし方が変わってくるはずだ.ただ,習慣のコントロールは難しい.気づいたときには身についているもので,やめようと思ってもやめられないし,良かれと思って始めてみても,なかなか続けられない.習慣というのは本当にやっかいなものだ.

しかし,近年の研究成果によると,そうでもないらしい.習慣とは何とかコントールできる対象のようだ.本書は,様々な個人,組織,社会と様々なレベルの事例を挙げながら,その方法を解き明かしている.

習慣とそれをコントロールするためのポイントは以下のとおりである.

  • 習慣は,欲求により作動された,きっかけ,ルーチン,報酬からなるループである.
  • 欲求,きっかけ,報酬を変えるのは難しいが,ルーチン(毎朝ジョギングするとか,タバコを吸うとかに当たる)は変えられる.
  • きっかけと報酬を見える化する.そして,そのきっかけのときに,その報酬が得られるような行動を行う.その行動が両者に結びつけば,ルーチンとなる.
  • つくりかえた習慣のループを永遠のものに変える要素は,「信じる」ことである.
  • 連鎖反応を起こして他の習慣を変えていくような習慣のことをキーストーン・ハビットと呼ぶ.
  • キーストーン・ハビットが与えれてくれるのは,「小さな勝利」(大きな勝利にもう少しで手が届くと思わせるもの)と呼ばれるものである.
  • キーストーン・ハビットの一つに意志力(無意識に自分を制御する習慣)があり,個人の成功にはこれが求められる.
  • 「ものごとを自分でコントロールしている感覚」は,意志力の保持に役立つ.
  • 新しい習慣を売り込むには,新規のものを古い習慣に見せるようにする.

2015年2月10日火曜日

[読了]良い習慣悪い習慣

「良い習慣悪い習慣」を読みました.

Jeremy Dean: 良い習慣悪い習慣, 東洋経済, 2014-09 [アマゾン, 楽天]

本書についてのメモを以下に記しておきます.

行動を習慣化させるには,どのくらいの時間がかかるか?本書は.この疑問の答えを探すところから始まる.巷によると21日が有力な説であるが,学術的な研究成果によると平均で66日になるらしい.行動によって短くなったり,長くなったりするが,行動を習慣化するにはどうも2ヶ月ぐらいかかるみたいだ.

習慣とは,自動化された行動である.行動の習慣化は,意図的にそうすることもできるし,経験からそうなってしまうこともある.いずれにせよ一旦行動が習慣化されれば,結果の善し悪しにかかわらず,無意識が周囲の状況に基づきその実行をコントロールするようになる.

行動を習慣化するためのポイントは次のとおりである.

  • 達成する価値のある最終目標を持つ.
  • 最終目標までの具体的なプロセスを考える.
  • 同じ状況下で繰り返す.
  • 進捗をモニタリングする.
  • 行動して得られるものが報酬となるようにする.
  • 不満に対処する.
  • 心理的対比(夢想と現実を比較すること)と実行意図(「〜ならば〜する」と定めること)を組み合わせて行動する.
  • 生活に組み込むのが難しい運動などは,既存の生活習慣に付随させる.

2015年1月11日日曜日

[読了]Hooked ハマるしかけ

「Hooked ハマるしかけ」を読みました.

Nir Eyal, Ryan Hoover: Hooked ハマるしかけ, 翔泳社, 2014-05 [アマゾン, 楽天]

本書についてのメモを以下に記しておきます.

習慣とは,無意識,あるいは,ほとんど意識しないままに行われる行動のことである.ある種のビジネスにとって,プロダクトの習慣化は,成功の必須要素となる.本書で記されているフック・モデルはそのための効果的な枠組みを提供する.

フック・モデルは,トリガー,アクション,リワード,インベストメントという4つのフェーズをスパイラルに回して,プロダクトの習慣化を図ろうとするものである.使うきっかけを与え(トリガー),使っている最中は心地よさを感じさせながら(アクション),好感を持って使い終わるようにし(リワード),そして,次に使う準備をユーザにしてもらうようにすれば(インベストメント),プロダクトは継続して使われる可能性が上がる.

フック・モデルの各フェーズにおいて示されている方針は,心理学等の研究成果に基づいたものなので,それに従ったプロダクトを開発すれば,そのプロダクトに高い習慣化能力を持たせることができるように思える.長期的な利用を狙ったプロダクトの開発にちょうど携わっているので,このプロダクトにフック・モデルを適用させてみたい.

2014年2月3日月曜日

[読了]BORN TO RUN

「BORN TO RUN」を読みました.

Christopher McDougall: BORN TO RUN, NHK出版, 2010-02

本書についてのメモを以下に記しておきます.

ジョギングを始めてから4年目になる.1年目は5km走るのがやっとだったが,2年目には20kmを越えて走れるようになった.当時は,ひと月の走行距離が100kmを超えていたし,1kmを5分程度で走れるようになった.でも,最近は,ひと月に50kmを走るのがやっとで,1kmを5分台で走れなくなった.

原因は左膝の痛みである.走る回数が多かったり,1度に10kmぐらい走ったりすると,左膝が痛くなる.それを我慢して走ると,数日間激痛に悩まされることになる.4年も続けると,市民マラソンとかに挑戦したくなるのだが,「出場=ジョギングリタイア」になるはずなので,そうするわけにはいかない.そんな状況に嫌気がさしていたときに目に止まったのが本書である.

本書は,走ると足が痛くなる理由や,走りと人類の進化との関係を取り上げながら.著者と様々なランナー,そしてある部族との交流を描いた物語である.彼らの交流については,本書を読んでもらうことにして,ここでは,走ると足が痛くなる理由や,走りと人類の進化との関係について簡単にまとめておく.

走ると足が痛くなるのは,シューズと走り方に原因がある.人間の足は,長い進化の過程において裸足で走ることに最適化された.そのため,シューズを履いて走ると,そのバランスが崩れて,足の各部に痛みが生じる.また,足の接地部分を踵(かかと)から爪先に移して走る方法は,足のひねりを過度に引き起こし,シューズと同様の結果を招く.本書では,「高価なシューズほど故障率が上がる」,「分厚いクッション付きのシューズが踵から接地する走り方を産んだ」,「裸足でトレーニングすると,怪我をしなくなる」などの事例を挙げながら,その原因について分析している.

走りと人類の進化の話では,人間の足が裸足で走るのに最適化された理由について答えている.他の陸上動物と比べてこれといった強みを持たない人類が現在まで生き残れたのはなぜか.それは,我々人類が走る能力を身につけたからである.走る能力といっても,我々人類が身につけたのは,短い距離を速く走る能力ではなく,長い距離を絶え間なく走る能力である.ほとんどの陸上動物が速く走る能力を選んだのに対し,我々人類は長く走る能力を選んだ.それは,速く走る動物達は,長く走り続けるとバテて動けなくなるからだ.大昔の人類は,獲物を狩る手段を得るため,長い距離を絶え間なく走る能力を獲得したのである.

いずれも目からウロコ的な話だが,真偽の程は実践で確かめてみることにしたい.どうもアフリカのマラソンランナーの走り方がベストみたいなので,それを真似てみることにした.そうすると,踵から着地せずに走れるらしい.膝痛が解消すればよいのだが,さてどうなることやら.ちなみに,本書を読むと,読者は走りたくなるそうである.その話は本当だったので,走ろうかどうか迷っている人は,本書を読んで見るのが良いかもしれない.

2013年9月9日月曜日

[読了]MAKERS

「MAKERS」を読みました.

Chris Anderson: MAKERS, NHK出版, 2012-10

本書についてのメモを以下に記しておきます.

本書は,ビットの世界で起きた変革がアトムの世界でも起きつつあることについて述べられている.それは,経済規模で捉えると,ビットの世界と比べて少なくとも5倍大きい世界での変革であり,21世紀版産業革命と呼ばれるものになるであろう変革である.

ビットの世界で起きた変革は,デジタル技術とネットワーク技術の融合によって生じたものである.それらが,広大なスペースを持つ棚と際限なくそこに並ぶモノをサイバー空間の中に登場させたおかげで,我々は従来より自分の嗜好にあったモノを供給したり消費したりすることが可能になった.そして,個人の嗜好に従ったモノの供給と消費は,ビットの世界に様々なロングテールを出現させた.さらに,ビットの世界では,モノのフリー化も進展している.サイバー空間にある棚に無償のモノが供給されるケースが多くなっているのである.

アトムの世界で起きつつある変革は,先の二つの技術に加え,3Dプリンタに代表される新たな製作技術の登場によって生じている.これらは,モノの製作に必要なツールを企業の工場から個人の工房へと移し,また,個人のアイデアを補強したり,集約したりする場を提供する.これにより,ツールを使いこなすスキルは必要になるものの,自分の嗜好にあうモノを自分自身で製作できるようになる.もう自分が欲しいモノを気長に待つ必要はなくなる.さらに,気が向けば,自分と同じ嗜好の持ち主のためにそれをサイバー空間の棚に置くこともできる.

モノを製作するツールの大衆化とそれを並べる棚の存在がビットの世界で起きた変革をアトムの世界にもたらしている.アトムの世界では,ロングテールの真ん中の部分がごっそり抜け落ちていた.極端に言うと,工場で大量生産されたモノがある頭と,オーダメイドのモノがある尻尾の先は存在するものの,胴と尻尾の大部分にモノは存在しなかったのである(デジタルの世界ではこの部分の売上は全体の3分の1程度あるそうだ).しかし,アトムの世界で起きつつある変革は,この部分にもモノを供給するようになる.それは,大量でもなく,少量でもなく,小回りの効く中規模なチームが生きていくのに必要な利益を生み出せる量のモノが存在する場所である.そして,自分だけでなく同じ嗜好の持ち主を満足させることができるやりがいのある場所である.

このような新天地が我々のすぐ目の前にある.まだ人が少ないうちに見物だけはしておいたほうがよいかもしれない.とりあえずAutodeskの123Dはダウンロードしてみた.3Dプリンタはどうしようか.

2011年7月10日日曜日

読了:ロングテール[アップデート版]

Chris Andersonのロングテールを読みました.

Chris Anderson, 藤森 ゆりこ(訳): ロングテール[アップデート版], 早川書房, 2009-07

本書に関する私的視点からの要約と考察を以下に記します.

[要約]
ロングテールとは,ロングテールド・ディストリビューション(裾の長い分布)の長い裾野の部分のことである.

人気度順に並べた商品の販売数をプロットすると,ロングテールド・ディストリビューションになる場合が多い.この分布において,人気度が高く,幅が狭い範囲をヘッドと呼び,人気度が低く,幅が広い範囲をテールと呼ぶ.ヘッドにはヒット商品が並び,テールにはニッチ商品が並ぶ.

近年,各種市場で見られるロングテールド・ディストリビューションに変化が起こっている.その変化とは,ヘッドが低くなり,テールが伸びるという現象である.商品の売れ筋がヒットからニッチへ移行しているのである.特に,テールの伸びは著しく,まさしくそれはロングテールとなっている.

この変化は,次に挙げる3つ追い風が市場に吹くことによって引き起こされている.従来の市場は,コスト,空間,時間などの制約から商品のラインナップは限定されていた.そして,それがヒットや大衆文化を生み出す要因となっていた.しかし,現在はそれら3つの追い風が従来の市場に課されていた制約を吹き飛ばしたり,弱めたりしている.

  • 生産手段の民主化
    商品の選択肢が増加し,人々の嗜好にあった商品が登場するようになった.
  • 流通手段の民主化
    消費のコストが減少し,それらの商品が人々の手に届くようになった.
  • 需要と供給の一致
    選択肢が増えても,口コミやフィルタにより商品を探し出せるようになった.

ロングテールド・ディストリビューションの変化は,市場だけでなく文化にも影響を及ぼしている.従来はヒットが文化を形成する役割を担っていたが,今後はニッチがその役割を担うようになる.人々は,常に一般的な興味と専門的な興味の両方を持ち,個人の中にはそれらが混在している.一般的な興味を満足させるのはヒット,専門的な興味は満足させるのはニッチである.これまでニッチは一部の人々だけが手に入れられるものだったが,広くアクセスできるロングテールの登場により,そうすることができなかった人々にもニッチが行き渡るようになった.さらに,商品に関する情報を共有する仕組みの登場により,ニッチを嗜好する人同士が出会えるようになった.こうして,ニッチごとに細分化された個別文化が醸造されるようになった.

[考察]
市場があれば,ロングテールド・ディストリビューション(必ずしもロングテールを備えているとは限らない)が登場するのは,社会活動の習わしのようなものみたいだ.

現代の市場では多数の人々がアクセスできる場に無数の商品が並び,そして,ここでもご多分に漏れずロングテールド・ディストリビューション(こちらはロングテールになっている)が登場する.ただ,この分布は一枚岩ではなく,たくさんの地層が積み重なってできたもののようだ.一つ一つの地層は,ある嗜好を反映しており,その中でもロングテールド・ディストリビューションが登場する.

嗜好の地層の形成を手助けしているのが,現在脚光を浴びているソーシャルメディアなのではないだろうか.特に,SNSは口コミのパワーが増幅されるメディアとして企業もその活用に躍起になっている.現状のSNSはソーシャルグラフを細分化する方向を目指し始めたような気がする.SNSの影響力がこのまま増せば,ニッチを嗜好する人同士の出会いは逆に失われるのではないだろうか.そんな気がしてならない.ツイッターのように不特定多数の人々がつながるメディアも以前として存在するので,両者のバランスがどうなっていくかは今後注意深く見ていく必要があると思う.

ちなみに,口コミには,ロングテールド・ディストリビューションのヒットを高くし,テールを低くする働きがある.そして,そうしてヒットが生まれる.近年のソーシャルメディアの普及は,口コミの働きを活性化するはずなので,各種市場のロングテールド・ディストリビューションでは,ヒットばかりが目立つようになるはずである.しかし,実際はそうならず逆の動きをしている.著者の分析によれば,人々がニッチ文化に分居しているので,口コミの影響範囲がその文化圏のみに限定されるからだそうである.なかなか鋭い考察だと感銘を受けた.